贈与者

POINT

  1. 贈与税の納税義務者は、相続税の課税体系により決まる。
  2. 遺産課税方式では、贈与者が納税義務者となる。
  3. 遺産取得課税方式では、受贈者が納税義務者となる。

贈与者(贈与を行う者)は、現行の相続税法では、贈与税の納税義務者とはならない。贈与税の課税方式、すなわち誰を贈与税の納税義務者とするかは、相続税の課税方式により定まる。

相続税の課税方式は、①遺産課税方式と②遺産取得課税方式に二分される。現行の相続税法は、相続又は遺贈により財産を取得したもの(原則として個人)に対し相続税を課税する遺産取得課税方式(1)を採用している。贈与税についても財産を取得した受贈者を納税義務者としている。個人から個人に対し贈与するケースでは、贈与者には何ら課税関係を生じさせていない(相法1の4)。

(1)純粋な遺産取得課税方式は、相続又は遺贈により実際に取得した額に応じ、各相続人が個別に申告する。この方式では、遺産を少人数で取得すると多人数で相続するよりも負担が重たくなる。そこで、兄弟三人のうち、一人が全遺産を相続しても、三人で均等に相続したとするような仮装分割が横行する可能性がある。このため、現行の相続税法は、相続人が法定相続分で遺産を取得したと仮定して相続税の総額を算出する遺産取得課税方式を採用している。

英米で採用されている遺産課税方式では、遺産そのものに相続税を課税する。遺産管理人や遺言執行者などは相続財産からまず相続税を納付し、その後、相続人や受遺者に遺産を分割する。贈与税についても、贈与者を納税義務者としている。米国内歳入庁(The Internal Revenue Service)はホームページで相続税(Estate Tax)を次のように定義している。

The Estate Tax is a tax on your right to transfer property at your death.
(相続税は死亡時に財産権を移転する権利に課税する。)

図表Ⅰ-2 相続税の課税方式の概念図

(1)遺産課税方式(米・英)

(1)遺産課税方式(米・英)
(1)遺産課税方式(米・英)

(2)遺産取得課税方式(日・独・仏)

(2)遺産取得課税方式(日・独・仏)
(2)遺産取得課税方式(日・独・仏)

贈与者の連帯納付義務と立替納付

受贈者(納税義務者)が納税しない場合には、贈与者は、贈与した財産の価額に相当する金額を限度として、受贈者には課税される贈与税について連帯納付義務を負うこととされている(相法34④)。

贈与税の課税対象となるのは現物資産に限らず、債務の免除や求償権の放棄などの経済的利益も含まれる(相法7、8、9)。受贈者に資金のゆとりがないとき、たとえば父が未成年の子に不動産を贈与した場合など、受贈者である子供が負担すべき贈与税を贈与者である父が負担することがある。贈与税相当額の経済的利益の贈与(相法8)、または納税資金の贈与となる。贈与税の課税対象は贈与を受けた不動産の相続税評価額に父が支払う贈与税相当額を加算した金額となる。

図表Ⅰ-3では、贈与税の課税対象を「不動産の相続税評価額+納税資金」と表示しているが、現実には、不動産を贈与した翌年の3月15日が法定納期限となるので納税資金の贈与は通常翌年となる(課税年分は異なる。)ことが多い。

ただし、贈与者が連帯納付義務を責めに基づいて贈与税を納付した場合において①受贈者が資力喪失の時には、求償権放棄の有無にかかわらず、贈与があったものとはみなされないが(相基通34-3)、②受贈者が資力喪失の状態になく、自己資金で納付が可能であるときでも、その納付が直ちに本来の納税義務者に対する贈与となるのではなく、求償権を放棄したとき(積極的に放棄していなくても、明らかに求償権を行使しないと認められる場合の含む。)に贈与があったものとみなされる(相基通34-3(注)、8-3)。

図表Ⅰ-3 不動産と共に納税資金を贈与した場合

不動産と共に納税資金を贈与した場合
不動産と共に納税資金を贈与した場合

受贈者

POINT

1. 受贈者は、次の三つに分類される。

  1. 常に贈与税の納税義務者となる者
  2. 特定の場合に納税義務者となる者
  3. 常に贈与税の納税義務者にならない者
  1. 個人(自然人)…常に納税義務者となる。
    制限納税義務者の場合、課税されるのは国内財産に限られる。
  2. 人格のない社団等…常に納税義務者となる。
  3. 持分の定めのない法人(持分を有する者がない法人)…特定の場合に贈与税の納税義務者となる。
    持分の定めのない法人に対し贈与があった場合、これにより贈与者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、その持分の定めのない法人は個人とみなされ贈与税が課税される。
  4. 持分の定めのある法人(持分を有する者がいる法人)…常に贈与税の納税義務者にならない。
    同族会社に対する贈与によりその会社の株式等の価額が増加した場合、増加した部分は他の株主等が贈与により取得したものとみなされ、贈与税の課税対象となる。

2. 法人に対する課税

人格なき社団等及び公益法人等は、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課税される。贈与による資産の取得は通常収益事業に該当せず、法人税は課税されない。

普通法人が贈与によって取得した財産の価額は各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入され法人税が課税される。

3. 法人に対する贈与とみなし譲渡所得課税

法人に対して不動産や株式などの譲渡所得の基因となる資産を贈与した場合、時価で資産を譲渡したとみなされる(注)。

(注)国・地方公共団体に対する寄付や、公益財団法人等に対する寄付で一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、譲渡所得は非課税とされる。

イ 贈与税の納税義務者は個人に限られない

贈与により財産を取得した個人(自然人)は、贈与税の納税義務者となる(相法1の4)。

相続または遺贈(死因贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得したものには相続税が課税される(相法1の3)。相続開始前に、相続人やその他の親族などに財産を贈与すると、将来の相続財産を分散、減少させることができる。このような贈与による財産の移転に対し、何らかの課税をしないと相続における税負担の公平を保つことができない。そこで相続税法は、贈与により財産を取得した個人には贈与税を課すこととしている。

個人が財産を贈与する相手は、個人とは限らない。次のようなものが考えられる。

  1. 人格なき社団・財団
  2. 持分の定めのない法人
  3. 営利法人

このうち、人格なき社団・財団は無条件に個人とみなされ贈与税の納税義務者となる(相法66①)。持分の定めのない法人は、特定の場合に贈与税の納税義務者となる(相法66④)。株式会社などの営利法人は、受贈益に対し法人税が課税されるので贈与税の納税義務者となることはないが、留意すべき点は、法人が贈与を受けることにより、法人の出資者(株主等)の出資持ち分の価値が増加する場合は、贈与者から法人の出資者への贈与となることである。株価の増加は財産評価基本通達に定めるところにより算定する。類似業種比準方式で評価する会社ならば贈与により株価がほとんど増加しないケースも認められる。

個人が持分の定めのない法人に対し財産を贈与することに関連して、当該法人から特別の利益を受ける特定の範囲の者に対し贈与税を課税する規定(特別の法人から受ける利益に対する課税)があることにも注意が必要である(相法65)。

ロ 代表者または管理者の定めのある人格なき社団や財団

代表者又は管理者の定めのある人格のない社団・財団は、無条件に個人とみなされ贈与税の納税義務者となる(相法66①)。

人格なき社団や財団は所得税法や法人税法では、法人とみなされ、その収益には法人税が課税されるが、すべての収益に対し課税されるわけではない。法人税法には、代表者又は管理者の定めのある人格のない社団や財団(例:同窓会、町内会、PTA)の収益に関し、次の場合に限定して納税義務を課している(法法4①ただし書き)。受贈益に対しては法人税が課されない(所法4、方法的)。

  1. 34種類の「収益事業」を行う場合
  2. 法人課税信託の引受けを行う場合
  3. 退職年金業務等を行う場合

資産家が実質的に子どもの支配下にある代表者又は管理者の定めのある人格のない社団や財団に対し多額の資産を贈与しても、法人税は課税されない。人格なき社団や財団は容易に作ることができるので、贈与税が課税されないとなると、法人税も贈与税も課税されることなく財産を子どもの支配下に移転することが可能となる。このような租税回避が行われることを防止するため、相続税法は、個人が代表または管理者の定めのある人格なき社団や財団に財産を贈与した場合には、人格なき社団や財団を無条件に個人とみなして贈与税の納税義務者としている(相法66①)。贈与を受けた財産に対し法人税が課税されることがあれば、二重課税排除のため、相続税法施行例の定めるところにより、人格なき社団や財団に課されるべき法人税及び法人事業税等の額に相当する額は贈与税から控除することとされている(相法66⑤)(2)

(2)平成20年12月1日前に行われた贈与については、人格のない社団・財団の各事業年度の所得の計算上益金の額に算入されているときは、贈与税は課税されない(個人とみなされない)こととされていた。改正の趣旨は、贈与税の最高税率50%と法人税の最高税率40%の差を利用した租税回避の防止である。

人格なき社団・財団を設立するために財産の提供があった場合についても、同様の取り扱いとなる(相法66②)。

図表Ⅰ-4 人格なき社団・財団と贈与税

人格なき社団・財団と贈与税
人格なき社団・財団と贈与税

人格のない社団・財団に財産の贈与をした者が2名以上あるときは、贈与により取得した財産について、贈与者ごとに、贈与をした者の核一人からのみ取得したものとみなして贈与税の計算をする(相令33②)。

収益事業とは

収益事業とは、次の34種類の事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう(法法2⑬、法令5①)。

1.物品販売業、2.不動産販売業、3.金融貸付業、4.物品貸付業、5.不動産貸付業、6.製造業、7.通信業、8.運送業、9.倉庫業、10.請負業、11.印刷業、12.出版業、13.写真業、14.席貸業、15.旅館業、16.料理店業その他の飲食店、17.周旋業、18.代理業、19.仲立業、20.問屋業、21.鉱業、22.土石採取業、23.浴場業、24.理容業、25.美容業、26.興行業、27.遊戯所業、28.遊覧所業、29.医療保険業、30.技芸教授又は学力の教授若しくは公開模擬学力試験を行う事業、31.駐車場業、32.信用保証業、33.無体財産権の提供等を行う事業、34.労働者派遣業。

上記に掲げる事業であっても、それが公益社団法人・財団法人が行う公益目的事業に該当するものである場合、公益法人等が行う事業のうち身体障害者、生活扶助者、知的障害者、精神障害者、老人、寡婦などのためのもの等所定の要件を満たすものは、収益事業から除外されている(法令5②)。

「代表者又は管理者の定めのある」人格なき社団・財団とは

法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる(民訴29)。相続税法の規定は訴訟当事者能力のある人格なき社団・財団を個人とみなしているわけである。

人格なき社団について判例は、「団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の法法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」としている(最判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁)。「権利能力なき財団」については、「個人財産から分離独立した基本財産を有し、かつ、その運営のための組織を有していること」を必要とするとしている(最判昭和44年11月4日民集23巻11号1951頁)。

ハ 持分の定めのない法人が個人から贈与を受けたとき

持分の定めのない法人(持分の定めのある法人で持分を有する者がいないものを含む。以下同じ。)は、特定の場合に個人とみなされ贈与税の納税義務者となる(相法66④⑥)。特定の場合とは、贈与者等の親族その他これらの者と特別の関係がある者の贈与税、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときをいう(相法66④⑥、相令33③)。持分の定めのない法人を設立するために財産の提供があった場合についても同様の取り扱いとなる(相法66④)。

個人が持分の定めのない法人に対し財産を贈与したり、設立資金を贈与し場合には、持分の定めのない法人は法人税の納税義務者であるから、原則として贈与税が課税されることはない。この仕組みを利用して、個人が詩的に支配している持分の定めのない法人に贈与を行い、贈与された法人の財産を贈与者の親族や特別関係者が私的に利用するなど法人から特別の利益を受けることができるようにして実質的に相続税や贈与税の租税回避を行うことが可能である。このようなことに鑑み、贈与者等の親族その他特別関係者の贈与税、相続税が不当に減少するときは持分の定めのない法人を個人と見なして贈与税を課税することとされている(昭和39年直審(資)24「12」)。

相続税法で、持分の定めのない法人が個人とみなされるときは、相続税が課税されるが、(相続税法で個人とみなされたときも)法人格を有することに変わりはないので、遺贈資産は時価で譲渡されたものとみなされる(所法59①)。含み益のある資産ならば譲渡所得課税の対象となる。

図表Ⅰ-5 持分の定めのない法人が贈与税の納税義務者となる場合の具体例図

持分の定めのない法人が贈与税の納税義務者となる場合の具体例図
持分の定めのない法人が贈与税の納税義務者となる場合の具体例図

(イ)持分の定めのない法人とは

持分の定めのない法人とは、一般社団法人、一般財団法人、持分の定めのない医療法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、宗教法人など残余財産の分配請求権や払戻請求権がない法人や、定款等に社員等が残余財産の分配請求権や払戻請求権を行使することができる旨の定めはあるが、そのような社員等が存在しない法人をいう。法人税法2条6号に規定する公益法人等も持分の定めのない法人に含まれる。

持分の定めのない法人とは

  1. 定款、寄付行為若しくは規則(これらに準ずるものを含む。以下2において「定款等」という。)又は法令の定めにより、当該法人の社員、構成員(当該法人へ出資しているものに限る。以下2において「社員等」という。)が当該法人の出資に係る残余財産の分配請求権又は払戻請求権を行使することができない法人
  2. 定款等に、社員等が当該法人の出資に係る残余財産の分配請求権又は払戻請求権を行使することができる旨の定めはあるが、そのような社員等が存在しない法人

(平成20年7月25日付 資産課税課情報 第14号 13)

(ロ)不当に減少する結果と認められるときとは

贈与者等の親族その他これらの者と特別の関係がある者の贈与税、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときとは、持分の定めのない法人に対する財産の贈与または遺贈があった場合に、贈与または遺贈のときにおいて、法人の役員等の構成・機能、収入・支出の経理、財産の管理状況、解散のときの残余財産の帰属、その他の定款・寄付行為の定め等からみて、贈与者・遺贈者またはその同族関係者が提供または贈与された財産を私的に支配し、その使用、収益を事実上享受し、あるいはその財産が最終的にこれらの者に帰属するような状況にあるときをいう。財産の贈与や遺贈がない場合に比べ、同族間関係者らの相続税または贈与税の負担が減少する結果となるといい得れば足りる。結果的にいかなる者にどれほどの増税等の負担の減少をきたしたかを確定する必要はないとされている(昭和44.9.30東京地裁、税資76号906頁)。相続税法施行令33条3項は、次の適正要件を欠く場合と定めている。

  1. 運営組織が適正であり、特定の一族の支配を受けていないこと
  2. 贈与者、設立者、役員等に特別の利益を与えないこと
  3. 法人が解散したときに、残余財産を国等に寄付する旨の定めが定款等にあること
  4. 法令違反、公益に反する事実がないこと

上述の1.運営組織が適正であること及び2.特別の利益を与えないことの二点につき、通達は詳細な規定を置いている(個別通達:昭和39年6月9日付直審(資)24、直資77、平成20年7月8日付課資2-8改正「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び公益法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて(以下、「昭和39年直審(資)24」という)」)。

これを図示すると、図表Ⅰ-6となる。

図表Ⅰ-6 持分の定めのない法人が贈与税の納税義務者となるとき

原則:法人税の納税義務者
右の場合、贈与税の納税義務者となる法令:贈与者等の親族その他これらのものと特別の関係のあるものの贈与税、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき(相法66④⑤)
適正要件施行令:不当に減少する結果となるときとは、次の適正要件から外れた運営組織や事業運用がなされた場合をいう(相令33③)
①運営組織が適正であり、特定の一族の支配を受けていないこと
②贈与者、設立者、役員等に特別の利益を与えないこと
③法人が解散したときに、残余財産を国等に寄付する旨の定めが定款等にあること
④法令違反、公益に反する事実がないこと
通達:運営組織が適正であることとは、贈与のあったときだけでなく将来においても運営組織が適正でなければ組織が私的に支配され、贈与税、相続税の負担が不当に減少する結果となるとの観点から、①定款、寄付行為、規則などに理事及び監事の定数、理事会及び社員総会の定足数など一定の事項が定められていること(注)、②事業運営及び役員等の選任等が定款等に基づき適正に行われていること及び③事業が社会的存在として認識される程度の規模を有していることであり、特別の利益を与えることとは、贈与等をした者、法人の設立者、社員若しくは役員等及びこれらの親族、特殊関係者、同族法人等一定の範囲の者が法人所有財産の私的利用、余裕金の運用、有利な条件での金銭の貸付、無償又は低廉譲渡などをすることとされている(昭和39年直審(資)24、資産課税課情報第14号)。
(注)通達は持分の定めのない法人を次の三類型に分け、必要的定款記載事項を詳細に定めている。
①一般社団法人
②一般財団法人
③学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、宗教法人その他の持分の定めのない法人

(ハ)一般の篤志家からの贈与等があった場合の判定について

財産の贈与等(寄付)の仲には、座資産の贈与等を受ける法人の運営と全く関係のない篤志家からなされるものもあり、このような場合には、その法人からその贈与をした篤志家に特別の利益を与えることはおよそ考えられない。

そこで、次の要件を二つとも具備している場合は、上記(ロ)の適正要件の①「運営組織が適正であり、特定の一族の支配を受けていないこと」を満たさないときであっても、②から④までの要件を満たしているときは、「相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」に該当しないものとして取り扱うこととされている(昭和39年直審(資)24、平成20年7月5日:資産課税課情報14号)。

  • 贈与者が贈与を受けた法人の理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの及びこれらの者の親族と贈与者間には親族関係等の特殊関係がない場合
  • これらの者が、法人の財産の運用及び事業の運営に関して私的に支配している事実がなく、将来も私的に支配する可能性がないと認められる場合

(ニ)公益事業用財産の贈与税の非課税規定の不適用について

持分の定めのない法人が個人とみなされるときは、事業運営が特定の者や一族の支配に服し、特別関係者に特別の利益を与える場合に該当している場合である。したがって、同様の欠格事由を定める公益事業用財産の贈与税の非課税規定の適用要件に該当する余地はない(相法21の3、昭和39直審(資)24)。

(ホ)判定の時期等

相続税法66条4項(持分の定めのない法人に対する課税)の規定を適用すべきかどうかの判定は、贈与等の時を基準としてその後に生じた事実関係をも勘案して行うのであるが、贈与等により財産を取得した法人が、財産を取得したときには適正要件を満たしていない場合においても、当該財産に係る贈与税の申告書の提出期限又は更正若しくは決定の時までに、当該法人の組織、定款、寄付行為又は規則を変更すること等により同項各号に掲げる要件を満たすこととなったときは、当該贈与等については法66条4項の規定を適用しないこととして取り扱われる(昭和39直審(資)24「17」)。

図表Ⅰ-7 贈与税の納税義務者一覧表

贈与者受贈者所得に対する課税贈与税の納税義務者に該当するかその他
個人個人受贈益は所得税の課税対象とならない(相法9①十五)贈与税の納税義務者である
法人法人税を課税×贈与税の納税義務者とはならない受贈益による株価上昇分の経済的利益に対し、株主に対し贈与税を課税(法相9、相基通9-2)
代表者又は管理者の定めのある人格なき社団・財団
(例)同窓会・自治会・PTAなど
原則非課税(34種類の収益事業から生ずる所得に対し課税)無条件に個人とみなされ贈与税の納税義務者となる
持分の定めのない法人 原則非課税(34種類の収益事業から生ずる所得に対し課税)原則×、例外○左の規定の適用がある場合を除き、持分の定めのない法人(その施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属等について設立者、社員、理事、監事若しくは評議員、その法人に対し贈与若しくは遺贈をした者など(注)に対して特別の利益を与えるものに限る。)に対して財産の贈与又は遺贈があった場合において、その法人から特別の利益を受ける者が、その財産の贈与又は遺贈により受ける利益の価額に相当する金額をその財産を贈与又は遺贈した者から贈与又は遺贈により取得したものとみなして相続税又は贈与税を課税することとされている(相法65)。
(注)これらの者の親族その他これらの者と特別の関係がある者を含む。
贈与税の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果と認められるときは、個人とみなされ贈与税の納税義務者となる(相法66①④、相令31①)