POINT

  1. 贈与税の3年内加算の対象となる者は「相続又は遺贈により財産を取得した者」である。法定相続人であっても、相続又は遺贈により財産を取得しない者は対象とならない。法定相続人でなくても、遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与により取得した財産は、加算の対象となる。
  2. 相続開始の年において被相続人から取得した財産は、贈与税の配偶者控除の特例の適用を受ける財産(特定贈与財産)を除き、相続税の課税価格に算入する。贈与税の申告を要しない。

相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年に以内に被相続人から贈与により取得した財産があるときは、贈与税の配偶者控除を受けた財産(これを特定贈与財産という。)を除き、相続税の計算上、受贈財産の価額を相続財産に加算して相続税を算出し、贈与税額を控除することとされている(以下、「3年内加算」という。)(相法19)。贈与により取得した財産が贈与税の基礎控除以下であっても加算する。

ただし、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年において被相続人から贈与により取得した財産(特定贈与財産を除く。)で相続税法19条《相続開始3年以内に贈与があった場合の相続税額》の規定を受けるものは、受贈財産の課税価額を相続税の課税価格に算入するのみで、贈与税の課税価格に算入せず、贈与税額の控除もしないこととされている(相法21の2④)。この規定の趣旨は技術的なものである。

相続開始の年の贈与財産を相続財産に加算し、贈与税額を控除しようとすると、相よ税額を確定する必要がある。被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者の相続開始の年の贈与税額は、暦年贈与課税が累進税率を採用していることから、その者のその年の受贈財産の総額が確定する12月31日まで待たなければ確定しない。相続開始の年において被相続人から贈与により取得した財産(特定贈与財産を除く)は、単に相続財産に加算する方法が最も簡明な方法である。

加算される贈与により取得した財産の価額とは、財産を取得したときにおける時価により評価した価額をいう(相基通19-1)。要は、贈与税の申告を行った価額をそのまま加算するわけである。

相続の開始前3年以内とは、相続の開始の日から遡って3年目の応当日から相続開始の日までの間をいう(相基通19-2)。

相続又は遺贈により財産(生命保険等のみなし財産を含む。)を取得しなかった者は、3年以内加算の対象とならないのであるが、相続時精算課税適用者については、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合であっても、相続時精算課税適用者が、相続時精算課税の選択に係る年より前に特定贈与者から財産の贈与を受けていたときには、3年以内加算の対象となる(相基通19-3)。これは相続税法21条の16条1項の規定により、相続時精算課税の適用を受ける財産は相続又は遺贈により取得したものとみなされることによる(相基通19-11)。

相続時精算課税の適用者が特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した場合は、3年以内加算ではなく、相続時精算課税制度適用分からの贈与が相続財産に加算されるが(相法21の15①又は相法21の16①)、相続開始前3年以内の贈与ではあるが、贈与を受けた時点は被相続人が特定贈与者でない場合もあるので注意が必要である。たとえば相続開始間2年以内に相続時精算課税選択届出書を提出しているが、精算課税選択届出書を提出する以前の年分につき暦年贈与の適用があり、当該贈与の時点が相続開始前3年以内なら加算対象となる。

図表Ⅰ-20 相続時精算課税適用者に3年以内加算が生ずるケース

相続時精算課税適用者に3年以内加算が生ずるケース

相続税の無制限納税義務者は、相続又は遺贈により取得したすべての財産が相続税の課税対象とされているが、相続開始前3年以内の贈与加算の規定は加算する財産を贈与税の課税価格の基礎に算入されるものに限っている(相法11の2①、19①)。このことから、相続開始時点で無制限納税義務者であったものでも、3年以内加算の対象となる贈与を受けたときに制限納税義務者であり、法施行地以外の財産を取得した場合など、贈与税の課税価格に算入されないこととされている財産は、相続開始前3年以内の贈与であっても相続税の課税価格に加算されない(相法21の2②、相基通19-4)。

図表Ⅰ-21 3年内贈与加算一覧表

納税義務者贈与により取得した財産3年内加算有無
相続又は遺贈により財産を取得した者(みなし相続財産を取得した者を含む。)その年に取得した財産の価額が基礎控除以下である場合加算する
相続開始の年に受けた財産の価額は贈与税の課税価額に加算しないが相続税の課税価格に加算する
扶養義務者相互間において生活費等に充てるためにした通常必要な贈与加算しない(相法21の3)
公益事業用財産の贈与
特定公益信託からの贈与
特別障害者が受益者となる信託財産のうち6,000万円又は3,000万円までの金額加算しない(相法21の4)
特定贈与財産(婚姻期間20値二条の配偶者に対する居住用資産・購入資金の贈与)非課税となる2,000万円までの金額加算しない(相法19②)
制限納税義務者が取得した法施行地以外に所在する財産加算しない(相法22の2②)

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