人が死亡したときにその人の財産を誰に帰属させるかについて民法は遺言相続と法定相続の二つの制度を用意している。遺言相続における「遺言」は、人が自らの死後に自分の所有していた財産を誰に帰属させるかを自分の意思で決定できる制度である。

遺贈には①全部包括遺贈(すべての財産を一人のものに遺贈する。)、②割合的包括遺贈(長男、長女に2分の1ずつ遺贈するなど。)、③特定遺贈(特定の者を特定の者に遺贈する。)、④負担付遺贈、⑤清算型の遺贈(遺産を換金して遺贈する。)の五種類があり(1)、遺言があっても、必ずしも具体的にどの遺産が誰に帰属するかが決まるわけではない。全部包括遺贈や特定遺贈の積み重ねで被相続人がすべての遺産の帰属者を指定しているときは、原則として、遺言により財産の帰属者が決まる。遺言があっても相続分の指定や部分的割合の包括遺贈などでは、割合的帰属は決まっても、特定の遺産が誰に帰属するかを決めるために遺産分割協議が必要となる。遺産の承継・帰属は遺言を原則とし、補充的に法定相続制度があるのが民法の建前である(2)

(1)『家族法』p.328。

(2)埼玉弁護士会編『遺留分の法律と実務』p.4。