POINT
1.贈与税の配偶者控除は、戸籍上婚姻期間が20年以上の夫婦において、夫から妻、又は妻から夫に居住用の土地、借地権、底地、家屋を贈与した場合や居住用の不動産を取得するための金銭の贈与があった場合に、一定の要件を満たせば贈与税の課税価格から2,000万円を控除するという規定である。
2.贈与を受けた不動産を贈与の翌年3月15日までに贈与を受けた配偶者自身が居住の用に供することが必要である。金銭贈与の場合には、贈与の翌年3月15日までに贈与を受けた配偶者が不動産を取得し、居住の用に供することが必要である。
贈与の年において戸籍上の婚姻期間(注1)が20年以上である配偶者から専ら居住用の土地、借地権若しくは家屋で法施行地にあるもの(以下、「居住用不動産」という。)又は金銭を贈与により取得した者が、次の要件を満たすときは課税価額から2,000万円(注2)を控除する(相法21の6①)。
(注1)一度離婚して同一相手と再婚した場合は、通算して20年以上であれば適用できる(相令4の6①)。1年未満の端数は切り上げないので、贈与時点で満20年以上なければならない(相基通21の6-7)。
(注2)「贈与により取得した居住用不動産の価額」と「贈与により取得した金銭のうち居住用不動産の取得に充てられた部分」の合計額が2,000万円未満の時はその合計額。
贈与税の配偶者控除の適用を受けられる者(いか、「受贈配偶者」という。)が取得した次に掲げる土地・借地権(土地等)又は家屋は、居住用不動産に該当する(相基通21の6-1)。
① 受贈配偶者が取得した土地等又は家屋で、たとえば、その取得の日の属する年の翌年3月15日現在において、店舗兼住宅及び当該店舗兼住宅の敷地のように供されている土地等のように、その専ら居住の用に供している部分と居住の用以外の用に供されている部分がある場合における当該居住の用に供している部分の土地等及び家屋。
なお、この場合において、その居住の用に供している部分の面積が、その土地等又は家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の9以上であるときは、その土地等又は家屋の全部を居住用不動産に該当するものとして差し支えない。
② 受贈配偶者がその者の専ら居住の用に供する家屋の在する土地等のみを取得した場合で、当該家屋の所有者が当該受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族であるときにおける当該土地等。
なお、この場合における土地等には、受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族の有する借地権の設定されている土地(いわゆる底地)を含むものであるから留意する(③において同じ)。
③ 受贈配偶者が店舗兼住宅の用に供する家屋の在する土地等のみを取得した場合で、当該受贈配偶者が当該家屋のうち住宅の部分の居住し、かつ、当該家屋の所有者が当該受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族であるときにおける当該居住の用に供している部分の土地等。
上記の居住用不動産の取得には家屋の増築も含まれる(相基通21の6-4)。
また、居住用不動産には、居住用不動産が信託財産に含まれる信託に関する権利(信託財産に含まれる金銭により要件を満たす居住用不動産を取得場合も含む。ただし、集団投資信託、法人課税信託、退職年金等信託を除く。)が含まれる(相基通21の6-9)。
贈与税の配偶者控除は、比較的多く利用されている制度ではあるが、自宅以外に不動産を所有していない者が配偶者に贈与する場合の相続税の節税効果はあまり大きくない。というのも、自宅の敷地は、配偶者が相続するときには小規模宅地の課税価格の特例(特定居住用不動産)に該当し330㎡までは課税額が80%減額されるから自宅敷地の評価額が2,000万円に相当する持分を満額贈与しても相続税の課税価格に換算すると400万円しか減額されず、節税効果は少ない。自宅家屋を贈与するとしても、家屋は時の経過により老朽化し評価が下がるので家屋を贈与することは節税という観点から見ると有効ではない。
ただし、相続開始前3年以内の贈与であっても、贈与税の配偶者控除の額(最高2,000万円)までは、3年内加算をする必要がないので、その意味では課税価格に換算して400万円、実効税率20%で税額80万円と僅少ではあるが相続税の節税効果は認められる。
長年居住した自宅を売却する場合、土地も家屋も夫婦で共有ならば、二人とも居住用資産の譲渡の特別控除(最高3,000万円)を受けることができるので、高額な不動産ならば贈与税の配偶者控除を使い妻と共有にした後、譲渡すると各々居住用資産の譲渡の特別控除を適用できる(措法35)。ただし、居住用資産の特別控除を各々別々に受けるためには家屋もごく一部でよいので妻名義にする必要があり、かつ、贈与税の配偶者控除を受けるためには、贈与を行った翌年3月15日まで所有し居住しておく必要があることに留意しなければならない(土地を家屋とともに取得しないと不動産取得税の軽減がない。)。