公益法人等への贈与

POINT

  1. 相続又は遺贈により財産を取得したものが、相続税の申告期限までに、相続又は遺贈により取得した財産を公益法人等に贈与した場合、一定の要件を具備しているときには、その財産は相続税の非課税財産になる(措法70①)。
  2. 1の贈与を受けた公益法人等が、贈与があった日から2年を経過した日までに公益法人等に該当しないこととなったとき、又は贈与を受けた財産を2年をs経過した日において、なお公益を目的とする事業の用に供していないときは、相続税が課税される(措法70②)。

相続又は遺贈により財産を取得した者が国(注1)若しくは地方公共団体(注2)又は特定の公益法人等(対象となる公益法人は施行令で限定列挙されている。所得税の寄付金控除の対象となる公益法人等より範囲が狭いので注意が必要。)、認定特定非営利活動法人に対して相続又遺贈により取得した財産を贈与した場合(死因贈与は除く。)、①その贈与が相続税の申告期限までに行われていること、②その贈与によって、その贈与者又はその贈与者の親族等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になると認められないこと、③相続税の申告書に、非課税の規定の適用を受けようとする旨及びその贈与財産の明細等を記載するとともに、④贈与を受けた法人等の贈与を受けたことの証明書、その受贈者が相続税の非課税規定の適用がある公益法人に該当する旨の主務官庁又は所轄庁の証明書等を添付する等の要件を具備しているときには、その財産は相続税の非課税財産となる(措法70、措規23の3④)。

(注1)「国」には、政府の出資により設立された法人を含まないものとし、「地方公共団体」とは、都道府県、市町村、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団をいい、地方公共団体の出資により設立された法人は含まれない(措通70-1-1)。公立の学校等国又は地方公共団体の設置する施設の建設又は各町等の目的を持って設立された後援会等に対する財産の贈与(死因贈与は除く。)であっても、その贈与財産が最終的に国又は地方公共団体に帰属し、又は帰属することが明らかな場合には、国又は地方公共団体に対する贈与に該当するものとして取り扱われる(措通70-1-2)。

(注2)地方自治法1条の3に規定する「地方公共団体」とは、都道府県、市町村、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団をいう。

上記の法人で贈与を受けた者が、贈与があった日から2年を経過した日までに上記の法人に該当しないこととなった場合又は贈与により取得した財産を同日においてなおその公益を目的とする事業の用に供していない場合には、贈与財産の価額は、相続又は遺贈にかかる相続税の課税価格の計算の基礎に算入する。

この規定の適用対象となる「相続又は遺贈により取得した財産」には、相続又は遺贈により取得したものとみなされる死亡保険金、死亡損害保険金、死亡退職金、保健に関する権利(相法3)及び贈与又は遺贈により取得したものとみなされる低額譲受等のd経済的利益(相法7、9)、相続税法の信託に関する特例(集団投資信託、法人課税信託、退職年金等信託を除く。)の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされた信託に関する権利及び信託財産を含み、一定の要件を具備すれば、その財産については相続税が非課税となる(措通70-1-5)。相続開始前3年以内に当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産でその価額が相続税の課税価格に加算されるもの(相法19)並びに相続時精算課税の適用を受ける財産(相法21の15①、21の16①)は含まない。

生命保険金や死亡退職手当金の非課税金額の計算については、相続人又は受贈者が受け取った生命保険金又は死亡退職手当金から、国等に贈与した金額を控除した後の金額を基礎として計算することになる(相基通12-9、12-10)。

本規定の対象となる「相続又は遺贈により取得した財産」とは、相続又は遺贈により取得した財産そのものをいうのであり、たとえば、次のイの(イ)から(ト)までに掲げる財産は「相続又は遺贈により取得した財産」に該当するものとして取り扱われる。したがって、次のロの(イ)又は(ロ)に掲げる場合に該当して取得したそれぞれに掲げる財産は該当しないものとされる(措通70-1-6)。

イ 「相続又は遺贈により取得した財産」に該当する財産

(イ)相続又は遺贈により取得した建物等が火災により焼失した場合において、当該焼失に伴って取得した火災保険金(被相続人又は遺贈者(死因贈与による贈与を含む。)が契約者であるものに限る。)

(ロ)相続又は遺贈により取得した財産について租税特別措置法33条の4第1項《収容交換等の場合の譲渡所得等の特別控除》に規定する「収用交換等」による譲渡があった場合において、当該収用交換等に伴い取得した財産

(ハ)相続又は遺贈により取得した株式発行前の株式、株式の割当てを受ける権利又は株主となる権利について新株の割当て又は交付があった場合において、当該割当て又は交付により取得した新株式(当該新株式の払込金額が旧株式の取得者である相続人等により負担されたものである場合における当該被相続人等の払込金額にかかる部分を除く。)

(ニ)相続又は遺贈により取得した株式等の発行法人について合併若しくは分割又は解散があった場合において、当該合併若しくは分割又は解散により取得した株式、金銭等

(ホ)相続又は遺贈により取得した証券投資信託又は貸付信託の受益証券について信託期間が満了した場合において、当該満了により取得した金銭

(ヘ)相続又は遺贈により取得した貸付金債権について弁済期間が到来した場合において、当該弁済により取得した金銭

(ト)相続又は遺贈により取得した預貯金の払戻を受けた場合において、当該払戻を受けた金銭

ロ 「相続又は遺贈により取得した財産」に該当しない財産

(イ)相続又は遺贈により取得した財産について譲渡があった場合において当該譲渡により取得した財産(イの(ロ)の収用交換等に取得した財産を除く。)

(ロ)相続又は遺贈により取得した証券投資信託又は貸付信託の受益証券について信託契約の解約があった場合において、当該解約により取得した金銭

ハ 相続又は遺贈により取得した財産を著しく低い価額で国等に譲渡した場合

相続又は遺贈により財産を取得した者が、損取得財産を国、地方公共団体、特定の公益法人、認定特定非営利活動法人に対して著しく低い価額の対価で譲渡した場合には、相続税評価額から譲渡対価を控除した金額に相当する部分について本非課税規定の適用が可能である(措通70-1-8)。

ニ 香典返しに代えてする贈与

相続又は遺贈により財産を取得した者が、弔問者に対する香典返しとしてする物品の供与に代え、香典として取得した金銭等の全部又は一部を国等に贈与した場合におけるその金銭等の贈与については、本非課税規定の適用はない(措通70-1-9)。

ホ 贈与先に該当する公益法人等

贈与先に該当する公益法人等(既設の法人に限られ、設立のためにする贈与は含まない(措通70-1-3)。)とは次のものをいう(措令40の3)。

  1. 独立行政法人
  2. 国立大学法人及び大学共同利用機関法人
  3. 地方独立行政法人で地方独立行政法人法21条1号又は3号から5号までに掲げる業務(同条3号に掲げる業務にあっては同号チに掲げる事業の経営に、同条5号に掲げる業務にあっては地方独立行政法人施工例4条1号に掲げる介護老人保健施設の設置及び管理に、それぞれ限るものとする。)を主たる目的とするもの
  4. 公立大学法人
  5. 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団及び日本赤十字社
  6. 公益社団法人及び公益財団法人
  7. 私立学校法(昭和24年法律第270号)3条に規定する学校法人で学校(学校教育法1条に規定する学校をいう。)の設置若しくは学校及び専修学校(同法124条に規定する専修学校(注))の設置を主たる目的とするもの又は私立学校法64条4項の規定により設立された法人で専修学校の設置を主たる目的とするもの
  8. 社会福祉法人
  9. 更生保護法人

(注)上述7の専修学校は、次のいずれかの課程による教育を行う専修学校をいう(措規23の3)。

  1. 学校教育法(昭和22年法律第26号)125条1項に規定する好投課程でその修業期間(普通科、専攻科その他これらに準ずる区別された課程があり、一の課程に他の課程が継続する場合には、これらの課程の修業期間を通算した期間をいう。次号において同じ。)を通ずる授業時間数が2,000時間以上であるもの
  2. 学校教育法125条1項に規定する専門課程でその修業期間を通ずる事業時間数が1,700時間以上であるもの

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益財団法人の認定に関する法律のの施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により旧民法34条法人は平成20年12月1日より5年以内に一般社団法人又は一般財団法人に移行(公益認定等委員会の認定を受けることができる法人は公益社団法人若しくは公益財団法人に移行)した(移行しなかった場合は解散したものとみなされた。)。移行の登記の前日までの間は旧民法34条法人に対し相続財産を贈与した場合の本非課税規定の適用については、平成20年11月30日以前と同様とするとの経過措置が講じられた(平成20年改正措令附則57①②③④⑤、平成20年改正措規附則30①②、民法34条は平成20年12月1日移行削除された。)。

特定公益信託の信託財産への支出

POINT

  1. 相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続税の申告期限までに、取得した財産に属する金銭を認定特定公益信託の信託財産とするために支出した場合には一定の場合を除き、支出した金銭の額は、相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない(措法70③)。
  2. 金銭を受け入れた認定特定公益信託が受け入れの日から2年を経過した日までに認定特定公益信託に該当しないこととなった場合には、支出した金銭の額は、相続税の課税価格の計算の基礎に算入される(措法70④)。

相続又は遺贈により財産を取得した者が、取得した財産に属する金銭を相続税の申告書の提出期限までに認定特定公益信託の信託財産とするために支出した場合には、その支出により支出をした者又はその親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き、支出した金銭の額は、相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。

金銭を受け入れた認定特定公益信託が受け入れの日から2年を経過した日までに認定特定公益信託に該当しないこととなった場合には、支出した金銭の額は、相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入する。

相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続税の申告書の提出期限までに認定特定非営利活動法人に対し、当該認定特定非営利活動法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連する贈与をした場合について準用する(措法70⑩)。

上記のいずれの場合も上記の欠格事由が生じた場合には、2年を経過した日の翌日から4月以内に修正申告書又は期限後申告書を提出し、かつ、その期限内に納付すべき税額を納付しなければならない。

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