信託税制の概要
信託収益に対しては、受益者と信託財産の結びつきの程度によって、次の1~3の三つの方法のうちいずれかの方法により課税される。
税法上、信託については課税方法ごとに次のように区分することとされた。
(出典:財務省「平成19年度税制改正の解説」)
(注1)点線の枠内が平成19年度税制改正により措置されるもの。原則として、新信託法の適用を受ける信託について適用。
(注2)「受益者等」とは、受益者としての権利を現に有する受益者及びみなし受益者(信託の変更権限を現に有し、かつ、その信託財産の給付を受けることとされている者)をいう。
(財務省「平成19年度税制改正パンフレット」「平成19年度税制改正の解説」を一部改編)
発生時課税される信託の受益者等である個人のその信託に係る不動産所得の損失は、その損失が生じかなったものとみなされる。
発生時課税される信託につき、受益者等である法人のその信託による損失の額のうちその信託の信託財産の帳簿価額を基礎として計算した金額を超える部分の金額は、損金の額に算入されない。
また、信託の最終的な損益の見込が実質的に欠損となっていない場合に、損失補填契約等により信託による損益が明らかに欠損とならないと見込まれるときには、その損失の全額が損金の額に算入されない。
受益者連続型信託とは、「受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定めのある信託(信託法91)」をいい、後継ぎ遺贈型信託ともいわれている。
また、受益者の死亡にかかわらず、受益者指定権を有する者の定めのある信託(信託法89①)を設定することにより、受益者の死亡以外の事由を定めることによって、受益者が準じ入れ替わる信託を設定することができる。相続税法ではこれらも含めて受益者連続型信託と定義されている(相法9の3①、相令1の8)。
■相続税法における受益者連続型信託
信託期間は、信託がされたときから30年を経過したとき以後に新たに受益権を取得した受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでとされている(信託法91)。
つまり、30年を経過した後は、受益権のあたらな承継は一度しか認められない。そのため、委託者死亡により効力が発生する遺言信託の方が、信託設定時に効力が発生する遺言代用信託よりも信託期間が長くなる。
委託者の死亡により取得される受益権は委託者の相続財産及び遺留分算定基礎財産に算入される。一方、第一受益者の死亡により第二受益者が取得した受益権は、第一受益者の相続財産・遺留分算定基礎財産に算入されないと考えられている。(1)
(1)中小企業庁「信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会における中間整理」平成20年9月5日。
受益者連続型信託では、最初の受益者(第一受益者)の死亡その他の事由により、第二受益者が新たな受益権を取得することがある。
受益者連続型信託に関する権利を受益者が適正な対価を負担せずに取得した場合は次のような課税関係が生じる。
たとえば、信託期間中に信託財産から生ずる収益については配偶者に、信託終了時に残っている信託財産は子にそれぞれ与える、という信託行為の定めを置くこともできる。このように受益権を質的に分割することを「受益権の複層化」という。受益者連続型信託の受益権が収益受益権と元本受益権の二種類である場合もある。
受益者連続型信託の課税にあたっては、収益受益権の価値は、当該受益者連続型信託の信託財産そのものの価値と等しいものとして計算され、当該元本受益権の価値はゼロとなる。なお、収益受益者が法人である場合は、故人の持つ元本受益権の価値はゼロとはならない(相法9の3①)。
下の例では、元本受益者は、信託が修了し残余財産を取得した時に収益受益者から贈与又は遺贈により当該残余財産を取得したものとみなされて、贈与税又は相続税が課税される(相法9の2④)。
受益者連続型信託の場合、相続税・贈与税の課税においては、受益権の取得等の回数に応じて数度の贈与又は遺贈が擬制されることになる。そのため、例えば一度の課税で済む負担付遺贈で目的を達せられる場合は、後継ぎ遺贈型信託によらない方が課税上有利になる。