停止条件付遺贈

停止条件付遺贈においては、条件成就まで遺贈の効力が発生しないので遺贈の目的物は未分割財産として取扱い、民法900条から903条までの規定(法定相続分、代襲相続分、遺言による指定相続分、特別受益者の相続分)による相続分に従って課税価格を計算する。条件が成就する前に分割してしまった場合には、その分割した割合によって取得したものとして申告しても差し支えないこととされている(相基通11の2-8)。

条件が成就した場合には、遺贈の効力に基づき相続人が有していた遺贈の目的財産は受贈者に帰属する。これにより相続税が減少する相続人は条件成就を知った日の翌日から四ヶ月以内に更正の請求を行うことができる。条件が成就した停止条件付受贈者は、更正又は決定処分を受けるまで修正申告又は期限後申告をすることができる(相法32五、相令8三、相法31①、35③)。修正申告及び期限後申告に対し、加算税や延滞税は課税されない。

(注)受遺財産を取得した受遺者は、条件成就の翌日から十ヶ月以内に相続税の申告をしなければならないわけではない。相続税の申告は自己のために相続の開始があった日の翌日から十ヶ月以内に行わなければならないが(相法27)、申告書の提出が法定申告期限後であっても、税務署長による決定があるまでは申告書を提出することができる(通法18)。これを「期限後申告書」という。相続税においては、受遺者や相続人の範囲は、強制認知、胎児の出生、遺言の発見等によって相続開始後において異動し、取得する財産についてもこれらの事由により異動することがある。このような後発的事由により新たに納税義務者となる場合には、本来の相続税の法定申告期限が延長されるのか、本来の法定申告期限はそのままであるのかという問題が生ずる。相続税法30条は本来の法定申告期限は変わらないことを明らかにしている規定である(1)。法定申告期限は変わらないのだが、後発的事由により新たな納税義務者が生じ、期限後申告を提出する者は、本来の法定申告期限の翌日から期限後申告書を提出した日までの期間は延滞税の計算期間から除外することとされている(相法51②)。無申告加算税についても正当な理由があると認められる事実として取り扱われる(相法66①、平成12年7月3日 課資2-264相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて。参考通達等3)。

(1)『DHCコンメンタール相続税法』p.2635。

なお、停止条件成就後、受遺財産を取得したにもかかわらず期限後申告書の提出を怠り、決定処分を受けたときは、決定の通知を発した日と、当該事由の生じた日の翌日から起算して四ヶ月を経過する日のいずれか早い日までの期間が延滞税の計算期間から除外される(相法51②)。