父Aが所有している甲土地と子どもBが所有している乙土地を交換した場合の課税関係を考える。

基本

父Aが所有している甲土地(時価8,000万円、相続税評価額6,400万円:取得価額800万円)と子どもBが所有している乙土地(時価3,000万円、相続税評価額2,400万円:取得価額480万円)を交換した場合、課税関係は次のとおりとなる。

負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものが土地・借地権・建物・構築物などの不動産であれば贈与税の評価額は、取得時における通常の取引価額に相当する金額とされている(相法7、負担付贈与通達)。Aが取得した乙土地は3,000万円、Bが取得した甲土地は8,000万円であり、甲土地と乙土地の交換でBは実質的にAから5,000万円の贈与を受けていることになる。また、Aは甲土地をBは乙土地を各々3,000万円で譲渡したことになる。

この結果、A及びBは次の納税義務を負う。

Aには交換で取得した3,000万円の乙土地を対価とする譲渡所得が生ずる。Bは交換した甲土地のうち、3,000万円部分は乙土地の譲渡対価として、所得税の課税対象となり、残り5,000万円はAから贈与により取得したものとされ贈与税の納税義務を負う。

図表Ⅰ-25 親子間で時価の異なる宅地を交換した場合

親子間で時価の異なる宅地を交換した場合
親子間で時価の異なる宅地を交換した場合

図表Ⅰ-26 時価の異なる宅地の交換の課税事例(原則)

Aの譲渡所得の計算明細

項目金額(円)
収入金額30,000,000
取得費8,000,000
課税譲渡所得22,000,000

Bの譲渡所得の計算明細

項目金額(円)
収入金額30,000,000
取得費4,800,000
課税譲渡所得25,200,000

Bの贈与税の計算明細

課税価額50,000,000
基礎控除1,100,000
控除後課税価額48,900,000
税額20,495,000

交換差額が高い方の資産の20%以内である場合

父Aが所有している甲土地(時価8,000万円、相続税評価額6,400万円:取得価額800万円)と子どもBが所有している乙土地(時価7,000万円、相続税評価額5,600万円:取得価額1,120万円)を交換した場合、課税関係は次のとおりとなる。

図表Ⅰ-27 時価の異なる宅地の交換(所得税法58条の要件を満たすケース)

時価の異なる宅地の交換(所得税法58条の要件を満たすケース)
時価の異なる宅地の交換(所得税法58条の要件を満たすケース)

所得税法の固定資産の交換の特例は、1年以上所有している固定資産を他の者が1年以上所有している固定資産(交換のために取得したものを除く。)と交換し、交換前の用途と同一の用途に供した場合、交換差額が交換する資産の高額資産の20%以内であれば、確定申告をすることにより、課税の繰延べを可能とする特例である(所法58)。

( 8,000万円 – 7,000万円 )< 8,000万円 x 20%であるから、交換の特例が適用でき所得税法58条の交換の特例を適用する旨の確定申告を行うことにより、譲渡所得の課税は繰り延べられる(甲及び乙は等価とされる部分に対応する各々相手の取得価額を引き継ぐ。)。

差額の1,000万円部分はAからBへの贈与として贈与税の課税対象となる。

Bは7,000万円の土地を譲渡し、8,000万円の土地を取得しているので差額1,000万円が贈与税の課税対象となる(相法7、負担付贈与通達)。