被相続人が死亡した際、相続開始と同時にその財産は相続人全員で共有している状態となります。遺産分割を行わず相続人全員の共有財産として残しておくことも可能ですが、共有のままでは管理や運用に支障を生じ、もめ事の原因となりかねません。それを防ぐためにも早期に遺産分割の協議をして個々の遺産を各相続人に配分しておくのが賢明です。
相続人が不存在で遺言書もない、または遺言書があっても一部の遺産についてしか書いておらず遺産が残る場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。最終的に国庫に帰属されるとしても放っておけばよいのではなく、「被相続人に相続人がいない」ということを法的に成立させ、被相続人の財産と借金を精算し、最終的に残った遺産が国庫に帰属されます。
贈与財産には贈与税が課されますが、婚姻関係が20年以上の夫婦間であれば特別控除が受けられ、その年分の贈与財産から2,000万円の控除があります。婚姻関係20年以上の配偶者から贈与された居住用不動産や、居住用不動産購入資金として贈与された金銭のうち、贈与税の配偶者控除額に相当する受贈額のことを特定贈与財産と呼びます。
公益事業用財産とは相続税法基本通達に挙げられている概念です。社会福祉法、更生保護事業法に掲げられている事業、学校教育法で規定されている教育、育英事業、科学技術の普及、研究を推進する事業、図書館や博物館などの事業、宗教の普及などの事業、保健衛生にかかわる事業、政党や教会の行う事業、公園など公益事業において用いられる財産。
相続又は遺贈により取得した「被相続人居住用家屋」又は「被相続人居住用家屋の敷地等」を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるとき、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
動産の評価額の計算方法は調達価格を基準とします。調達価格とは課税時期に財産を現況で取得する際の価格です。調達価格が不明の場合は、新品小売価格から経過年数による減価の額で算出します。減価方法は定率法です。相続税の計算では、一世帯ごとに評価することが認められます。仏壇仏具や神具、その他の祭祀財産については課税されません。国や地方公共団体・特定の公益法人に寄付をした財産も課税されません。
市販の書籍に記載されている相続税の節税ノウハウマニュアルとそれらの書籍を下書きにした提案を受ける場合の注意は、生命保険の金額と生前贈与の金額です。生命保険は非課税の枠で加入すれば十分です。生前贈与はやみくもに行わず、限界税率を意識した贈与が効果的です。
遺産相続で土地や建物などの不動産を取得した場合は相続登記の手続きをする必要があり、相続登記の申請は2024年4月1日以降法律で義務付けられ、相続人が相続登記をせず3年以上そのままにしておいた場合には、10万円以下の過料に処されます。そのため、相続人はその所有権を確実にする為にも、不動産を相続した際は速やかに相続登記をする必要があります。
遺産分割で相続した土地や建物などの不動産は、相続登記の申請が必要です。簡単に言えば不動産の名義変更です。2024年4月1日より、相続登記の申請が義務化され、取得を知った日から3年以内に申請をしなければなりません。
被相続人の相続財産に不動産が含まれている場合は相続登記をすることになりますが、登記官が相続登記の審査をする際に相続放棄した者がいるのかどうか不明ですから、通常の書類に加えて「相続放棄申述受理証明書」(「相続放棄申述受理通知書」での代用はできませんので注意が必要です。)を提出する必要があります。
不動産などを共有していて、共有者の一人が相続人のいない状態で死亡した場合、相続財産清算人選任申立 、債権者や受遺者に向け公告、相続権の主張催告、相続人不存在確定、特別縁故者からの申し立てが順に行われます。これらの者に財産分与が行われてもなお残余財産が有り、その中に被相続人との共有財産が有れば、共有者のものとなります。
相続税の基礎控除額以上の財産を残しているであろう方が亡くなった場合、おおよその遺産総額を把握し、相続税申告の準備を確認し、相続税の申告を促すものが「相続についてのお尋ね」という書面です。単なる通知に過ぎず、必ずしも書面の内容通りに相続税が発生するわけではありませんが、相続税の申告が必要か不要か、税理士に相談するのが安心です。
銀行や郵便局の預貯金は、金融機関が本人の死亡を知った時点で凍結され、払い出しができなくなります。口座の凍結を解除するには、遺産分割を済ませて預貯金の取得者や取得割合を確定させる必要があります。取引の内容や相続人の状況、遺産分割の予定など、金融機関と認識を共有しておくと相続手続きをスムーズに進められます。
相続が始まれば不動産は相続人全員の共有財産となります。相続登記で特定の個人の名義にする手続きを取らず、不動産を共有状態のままにしておくと、売却したり修繕や建て替えをしようとしても、個人の判断だけではできず、相続人全員の承諾が必要になります。もし相続人の一人が亡くなると、その亡くなった方の相続人の承諾も必要になります。
不動産の遺産相続は預貯金や現金化している相続財産の相続よりも注意が必要です。不動産は分割しにくく、評価額の算出も手法次第で変わることがあるからです。現物分割、換価分割、代償分割、共有という選択肢がありますが、相続が始まった時点で、相続人と相続財産である不動産の状況をしっかり考慮して分割方法を決めます。