土地等の相続税評価には、不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解が必要で、「利用区分(効用・用途)」、「不動産の態様(構成)」という二面的アプローチが評価手法を考えるうえで重要です。
このような性質から、その自然的手億世は固定的であって硬直的であると言われています。
このような社会的及び経済的位置の可変性等があるという性質から、その人文的特性は可変的であって伸縮的であると言われています。
不動産(土地)と不動産市場の特性を理解できたとしても、ただ漫然と不動産を眺めていただけでは不動産を経済価値として捉える方法は見つかりません。それには、不動産と人間の生活と活動がどのように関わり合っているか(不動産のあり方)という観点が重要になります。その関係は次のように言い換えることができます。
という二面的な捉え方ということになります。
上記1を具体的に説明すると、自然環境と交通の便を兼ね備えた土地は住宅の用に供することによって快適さを、また、駅前の集客力のある土地は店舗の用に供することによって収益を得るように利用するというように、不動産ごとにその利用の仕方が違ってきます。
童謡に上記2については、住宅地は自ら利用し地上建物は低層のものとする、また、商業地費用を掛けて高層建築として第三者に賃貸する等、不動産ごとに有形的利用及び権利の態様が異なります。
例えば、高度商業地には高層ビルが建ち、店舗等のテナントが入り、主として収益性が市場価格を左右しています。これに対し、高級住宅地では低層の住宅が建ち、主として快適性が市場価格を左右しています。そしてこの二つの市場には代替性がなく、別々の市場が形成されています。このように、その不動産に最もふさわしい利用の仕方(最有効使用)になるよう、用途と有形的利用及び権利の態様の二つの組み合わせを合理的に決定した結果が、具体的な不動産のあり方に現れているのです。この二面的に不動産を捉えるということ、つまり、その価値を効用(用途)と費用(有形的利用及び権利の態様)として捉えることにより、経済的価値の計算ができ、さらにそれが実際の不動産市場の需要に裏付けられれば、より客観性のある市場価値が求められるわけですから、この二面的な捉え方がいかに重要か分かると思います。
例えば、路線価地域における不動産のあり方については、横軸に用途、縦軸に物的及び権利の態様をとり、【表1】のようにしてみるとよく分かります。
具体的には横軸に、ここでは便宜上、宅地(商業地、住宅地、工業地)を取り上げることにします。この「利用区分」欄は宅地をどのような用途に利用するかを表しています。また、縦軸に自用地(更地)、貸付地(貸地)、借地権、貸家建付地、底地等の主な態様をとります。この「有形的利用及び権利の態様」欄は、宅地を利用するにあたり、不動産をどのように構成してきたかを具体的に示しています。なお、不動産をどのような用途に利用しているかという観点からの分類を「種別」、不動産をどのように構成してきたかという観点からの分類を「類型」ともいいます。
Ⅰ~Ⅷは不動産の類型ごとにそれぞれの不動産市場が個別にあることを表しています。ただし、それらは密接な相互関係があり、貸付地~底地の市場とも関連して市場を形成しています。なお、この地域にある農地・山林等は、宅地として価格が形成されますので、宅地比準方式で評価することに留意します。
自用地は、土地のうえに存する権利が付着していない土地を自ら利用する場合その土地のことです。また、貸付地は、借地権の目的となっている土地のことです。借地権は、建物の所有を目的とした地上権または賃借権であり、底地は通常、借地権が設定されている土地をいいます。貸家建付地は、地主所有の建物を賃貸している場合の敷地をいいます。
ところで、相続税の土地等の評価計算では、「土地及び土地のうえに存する権利の評価明細書(第1表)」で宅地の用途に応じた自用地(更地)の評価を行い、その第2表で土地のうえに存する権利の態様に応じた評価をすることになっています。これも土地等に対する二面的アプローチに従ったものといえます。