路線価図等に表示された借地権割合には、地代や権利金に応じて調整が必要な場合があります。
普通借地権(既存借地権を含みます。)の評価は次のとおりです。
借地権割合は、通常、路線価図で正面路線価の後ろに表示してある記号の借地権割合及び倍率表の「借地権割合」欄に記載してある借地権割合を使います。
記号 | A | B | C | D | E | F | G |
借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
ところで、その借地権割合はどのような借地権を想定しているのでしょうか。
借地上には生活や事業の基盤が築かれているため、その地代の値上げは容易ではなく、抑えられる傾向にあります。そのため、地価の上昇ほど上がらなかったこれまでの地代(継続賃料)と新しく借地する場合の地代(新規賃料)との間に次第に相対的な乖離が生じてきます。この乖離は地主と借地人とが意図して生じさせたものではなく、社会的・経済的変動と共に自然発生的に生じたものです。このいわゆる借地人の借り得分の総和を現在価値に置き直したものが借地権価額とされています。
権利金等の授受に代えて地代を払う場合について、この借地権の定義を図で示すと【図52】のとおりです。
通常収受すべき権利金を支払っている場合には、【図53】のようになります。
なお、この図では、借地契約時の当初地代が地価の上昇にもかかわらず値上げされていないため、権利金を支払って取得した借地権に地価の上昇に伴う自然発生的な借地権部分があるとしてそれを付加しています。
(注)「相当の地代」と「通常の地代」について
借地権を評価する上で、その定義から、新規に借地する場合の地代(新規賃料)と既に借地権を有する場合の地代(継続賃料)が重要な要素となりますが、その額の計算を一般の人に求めることは困難なため、それぞれを計算しやすくしたものが「相当の地代の年額」と「通常の地代の年額」です。
「相当の地代の年額」は、実際に支払っている権利金の額又は供与した特別な経済的利益の額がある場合であっても、これに関係なく、その土地の自用地としての価額の課税時期の属する年以前3年間の平均額の概ね6%相当額です。
「通常の地代の年額」は、それが不明の時、その自用地としての価額から借地権割合による借地権価額を控除した金額(底地価額)の課税時期に属する年以前3年間の平均額に対して6%をその額として計算してよいことになっています。
なお、地域で地代相場が客観的に確立しているなど「相当の地代の年額」や「通常の地代の年額」が明らかな場合は、その額を基に計算することができますが、その把握が困難なのが実情です。
権利金の授受、地価の下落等の相当な理由なく、相当の地代を引き下げた場合には、【図54】のようになります。
地代を引き下げた時点で「借り得分」を借地人に贈与したことになります。その「借り得分」の計算は、次のようになります。
地代引き下げ後の借地権の価額及び貸宅地の価額は、次の(ロ)のとおりです。
借地権の設定に際し、その設定の対価として、通常、権利金その他の一時金を支払う慣行のある地域において、当該権利金の支払いに代え「相当の地代」が支払われている場合などは、次により借地権の額を評価します。
イ 相続又は贈与の時において、「相当の地代」が支払われている場合、又はその土地の賃借について、「土地の無償返還に関する届出書」(法人税基本通達13-1-7)が提出されている場合
(注)ただし、同族法人が土地を借りている場合などで、同族株式を純資産方式で評価する場合は、課税の公平を図るため、土地の評価額からその20%を控除すると共に、同額を資産計上しなければなりません。
ロ 相続又は贈与の時において支払われている地代の年額が「相当の地代」に満たないが「通常の地代」の年額を超える場合は、次の算式により計算した金額になります。
(設例)
相当の地代に満たない地代が支払われている場合の借地権及び貸宅地の評価
この場合、5,000万円の80%を超えているので、5,000万円の80%である4,000万円にとどめます。たとえ、借地権価額が0であっても、借地権者の建物が現にあることによる利用上の制限があるため、最低20%の減額をすることになります。
≪参考≫通常の借地権及び定期借地権(平成4年8月1日施行の新借地借家法で創設)の概要は次表の通りです。
要件 | 区分 | ||||
借地借家法 | 旧借地法 | ||||
定期借地権 | 普通借地権 | 既存借地権 | |||
一般定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | 事業用借地権 | |||
利用目的 | 限定なし | 限定なし | 事業用に限る | 限定なし | 限定なし |
存続期間 | 50年以上 | 30年以上 | 10年以上 20年以下 | 30年以上 | 堅固30年以上 その他20年以上 |
契約更新 | なし | なし | なし | 法定更新 | 法定更新 |
終了事由 | 期間満了 | 建物譲渡 | 期間満了 | 正当事由 | 正当事由 |
定期借地権の価額は、原則として、課税時期において借地人に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定して金額によって評価しますが、課税上弊害がない限り、次の算式によって評価することになっています。
(計算)
(注)定期借地権設定時における通常の取引価額(ここでは8,000万円)は、設定契約等においても明確でなく、かつ、地価変動が著しくない年の時は、その年における自用地価額を0.8で割り戻した価額によって差し支えないとされています。
設例1の設定内容のうち、定期借地権設定時に借地人が支払う権利金の額(契約期間終了時に返還を要しないもの)800万円と毎年の支払年間地代84万円(月7万円)を以下のとおり変更した場合の定期借地権等の価額
(計算)
次の原則的な評価方法によります。
前記「設例2」の場合、4,000万円(課税時に木おける自用地価額)-1,794,960円(定期借地権等の価額)=38,205,040円
ただし、その評価額が、自用地としての価額から自用地としての価額に定期借地権等の残存期間に応ずる場合(【表27】)を乗じて計算した金額を控除した方が低い場合は、その金額によって評価します。
38,205,040円>4,000万円(課税時期における自用地価額)×(1-0.2(【表27】の割合))=3,200万円
したがって、3,200万円となります。
残存期間 | 割合 |
5年 | 5% |
5年超10年以下 | 10% |
10年超15年以下 | 15% |
15年超 | 20% |
一般定期借地権の目的となっている宅地については、上記の原則的評価方法に代えて、次のように評価します。
4,000万円(課税時期における自用地価額)-4,000万円(課税時期における自用地価額)×[1-0.6(一般定期借地権が設定された時点の底地割合)×29.916÷35.000(定期借地権の逓減率)]=20,513,828円
算式中の「一般定期借地権が設定された時点の底地割合」は、【表28】によります。
借地権割合 | 一般定期借地権が設定された時点の底地割合 | ||
路線価図 | 評価倍率表 | ||
地域区分 | C地域 | 70% | 55% |
D地域 | 60% | 60% | |
E地域 | 50% | 65% | |
F地域 | 40% | 70% | |
G地域 | 30% | 75% |
(注1)この表にないA地域(借地権割合90%)、B地域(借地権割合80%)及び権利金の収受の慣行のない地域については、一般定期借地権以外の定期借地権目的となっている宅地の評価となります。
(注2)通常の第三者間取引を前提としていますので、定期借地権者と地主との関係が特殊なもの(親族、同族法人等)である場合には、原則的な評価方法によります。