経済合理性や形状から判断して、宅地造成が見込めない場合は、宅地比準方式で評価する必要はありません。
市街化区域にあるが、宅地造成すると採算がとれない、あるいは急傾斜地のため造成工事が不可能であるような山林が郊外に散在していることがあります。このような市場性を有しない山林は、近隣の純山林(山林としての本来の用途に供される山林)に比準して評価することができます(評基通49)。
宅地への転用が見込めない山林であるか否かは、①宅地化するには多額の造成費を要する場合のように経済合理性から判断する場合と、②宅地造成が不可能と認められるような急傾斜地等、その形状から判断する場合が考えられます。
市街地山林を宅地比準方式により評価する場合、宅地造成費に相当する金額が、その山林が宅地であるとした場合の価額の100分の50に相当する額を超えることがあります。このような場合の実務的な対応としては、「この評価基準によって算定した宅地造成費に相当する金額が、その土地が宅地である場合の1㎡当たりの100分の50に相当する額を超える場合は、その宅地造成費に相当する金額は個別に評価する」ものとして扱われます。
市街地山林について、宅地造成費に相当する金額を控除して評価する場合、宅地としての価額より宅地造成費に相当する金額の方が大きいため(多額の造成費がかかる場合)、その評価額がマイナスとなることも予想されます。評価額がマイナスであるということは、その市街地山林が負の資産であることを意味することになりますが、合理的な経済人が、宅地として100の価値しかない土地へ、その価値を超える造成費(例えば、120)を投下することはあり得ず(120を投下しても100しか回収(売却)できない)、通常、その市街地山林は現況のまま放置されることになります。
また、経済合理性からみて宅地化への転用が見込めない場合であっても、土地の所有権を持っていれば、通常、その土地本来の現況地目(市街地山林であれば山林)としての利用が最低限可能であることから、その土地の価額は、その対象地本来の現況地目である山林の価額(宅地化期待益等を含まない林業経営のための純山林の価額)を下回ることはないと考えられます。
以上のことから、宅地比準方式により評価した市街地山林の評価が純山林としての価額を下回る場合には、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない市街地山林に該当すると考えられ、その市街地山林の価額は、純山林としての価額により評価することになっています。
(注)比準元となる具体的な純山林は、評価対象地の近隣の純山林、つまり、評価対象地からみて距離的に最も近い場所に所在する純山林となります。
この取扱いは、市街地(周辺)農地、市街地原野等への準用も認められます。例えば、蓮田等で多額な造成費が見込まれる場合に、宅地比準方式により評価額を算出するとマイナスとなることが予想されます。このような場合には、宅地への転用が見込めない市街地山林の評価方法に準じて、その価額は、純農地の価額により評価することになります。
また、市街地原野についても同様のケースが予想されますが、この場合も純原野の価額により評価することになります。
さらに、池沼については、評基通62(池沼及び池沼の上に存する権利の評価)により、原野に関する評価の定めに準じて評価することになっていますが、例えば、市街化区域内にある大規模な池沼で多額の造成費が見込まれ、宅地比準方式により評価額を算出するとマイナスとなるような場合にも、宅地への転用が見込めない市街地山林の評価方法を準用して評価するのが相当と考えられています。したがって、宅地への転用が見込めない池沼についても、その価額は純原野の価額により評価することになります。
この場合、宅地への転用が見込めないので、市街地周辺農地について80%に減額される(評基通39)ことはありません。
(注)『平成16年6月29日付「財産評価通達の一部改正について」つうたつのあらましについて(情報)』参照。