受遺者の住所地や取得した財産の所在地による相続税の納税義務

課税は国家主権の表れであり、納税義務書は原則として日本国内に住所を有している者及び日本国内の財産を取得する者である。遺贈(死因贈与を含む。)においても、財産を取得した者が日本国内に住所を有していれば、遺贈を受けた財産が海外にあっても受遺者は相続税の納税義務者となる。これを居住無制限納税義務者という。

受遺者の納税義務概要

相続税の納税義務者は原則として個人であるが、人格のない社団や財団は個人とみなされ、持分の定めのない法人でも個人とみなされる場合がある。また、遺贈(死因贈与を含む。)により財産を取得した個人及び個人とみなされる者であってもその者の住所地や財産の所在地により納税義務者とならない場合もある。

高度の公益事業を行う個人及び人格なき社団・財団に対する相続又は遺贈に係る非課税財産規定

公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業のみを専念して行う個人が相続又は遺贈により、又は高度の公益事業のみを目的事業として行う社団・財団が遺贈により、取得した財産で公益を目的とする事業の用に供することが確実なものは非課税財産とされ相続税は課税されない。

遺贈の放棄

特定遺贈は、遺言者の死亡後、いつでも放棄することができる。特定遺贈とは、特定の具体的な財産的利益を遺贈することである。受遺者に債務だけを負担させる遺言は遺贈ではない。「長男に貸している貸付金を免除する」というように債務の免除をすることもできる。遺贈の効果は遺言者死亡の時に遡及する。

包括遺贈

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することから、被相続人の積極財産だけでなく消極財産たる債務も承継する。承継した債務は相続税の申告において債務として控除される。包括受遺者が被相続人の親族でなくとも、相続人と同一の権利義務を有するから負担した葬式費用を相続税の申告において控除することができる。

遺言による財産処分の三類型

①相続分の指定、②遺産分割方法の指定、③遺贈。このうち、①相続分の指定と②遺産分割法方法の指定は、遺言者が相続人に対して遺産の分け方をどうすべきか意思を示す方法である。遺言者は、遺言で共同相続人の各相続分を指定することができる。法定相続分と異なった割合を決めることができるのである。

更正の請求

相続税又は贈与税の申告に誤りがあり過大納付となっていたときには法定申告期限から五年以内に国税通則法の規定により更正の請求をすることができる。また、同法は、法定申告期限後に生じた後発的事由等による場合には、それらの事由が生じた日の翌日から二ヶ月以内に更正の請求をすることができることとしている。

法定申告期限後に分割協議が調ったとき

納税額が減少する者は、法定申告期限後五年を経過していたときにも、分割協議が調った日の翌日から、四ヶ月以内に更正の請求をすることができる。税額が増える者は、更正を受けるまでは、いつでも修正申告を行うことができる。過少申告加算税は課税されず、延滞税は申告書を提出する日までに納付すれば課税されない。

遺留分減殺請求と遺言に基づく申告

兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を持つ。遺言が有効であっても、相続人が配偶者、直系尊属、子又は子の代襲相続人などの遺留分権利者であれば遺留分減殺請求権を行使し、遺留分に相当する財産を取り戻すことができる。

遺言無効確認の訴えと遺言に基づく申告

遺言は無効であるとして、遺言無効確認の訴えが提起されているときでも、一見、形式上有効な遺言があれば遺言に基づき申告を行えばよい。遺言により一切の財産を取得しないとされている者が遺言の無効を主張している当事者であるとき、税務上は遺言が無効であることが裁判で確定するまでは申告を行う必要はない。

遺言

遺言は、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、厳格な方式が定められている。遺言の方式には大きく分けて自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という三つの方式がある。これら、民法の定める方式に従わない遺言はすべて無効である。「あの人は、生前こう言っていた」などといっても、どうにもならない。

遺贈

人が死亡したときにその人の財産を誰に帰属させるかについて民法は遺言相続と法定相続の二つの制度を用意している。遺言相続における「遺言」は、人が自らの死後に自分の所有していた財産を誰に帰属させるかを自分の意思で決定できる制度である。

法人が受益者となる受益者等課税信託の課税関係

委託者である居住者がその有する資産を信託し、法人が適正な対価を負担せずに受益者やみなし受益者となる場合には、その法人が対価を負担していないときは、信託目的財産を委託者である居住者から贈与により取得したものとされる。この場合、委託者である居住者は信託財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される。

法人に対する負担付贈与

個人が法人に対し負担付贈与をしたときは、負担額が贈与する財産の時価の2分の1未満であるときは、時価で譲渡したものとみなされる。法人に対しては、受贈資産の時価と負担額との差額を受贈益として法人税が課税される。