法人から個人に対する贈与(相法21の3①一)

個人が法人から贈与により取得した財産は一時所得として所得税が課税され、贈与税は非課税とされている。贈与した法人は当該財産を時価で譲渡したものとみなされ、含み益があれば益金の額に算入する。含み損があれば損金の額に算入する。

個人から法人に贈与する場合

個人が法人に財産を贈与したときは、資産を時価で法人に譲渡したとみなされ、贈与した個人に所得税が課税される。受贈者が営利法人の場合は、取得した資産の時価を受贈益として計上し、法人税が課税される。受贈者が代表者又は管理者の定めのある人格なき社団・財団のときは、個人とみなされ贈与税が課税される。

個人に対する負担付贈与

個人から個人へ負担付贈与を行った場合には贈与財産の価額から負担額を控除した価額が受贈益になり、受贈者に贈与税が課税される。贈与財産が不動産である場合には、その贈与時おける通常の取引価額に相当する金額が贈与財産の価額になる。受贈者が負担する債務が贈与者の利益になるものについては贈与者に所得税が課税される。

贈与契約と贈与税の納税義務の成立

贈与税の納税義務は、贈与により財産を取得した時に成立する。贈与による財産の取得の時とは、書面による贈与は、贈与契約の効力が発生したとき。書面による贈与でも、停止条件付の贈与契約の場合には条件が成就した時。書面によらざる贈与契約(口頭契約)は履行の時。

法人が受益者となる受益者等課税信託の課税関係

委託者である居住者がその有する資産を信託し、法人が適正な対価を負担せずに受益者やみなし受益者となる場合には、その法人が対価を負担していないときは、信託目的財産を委託者である居住者から贈与により取得したものとされる。この場合、委託者である居住者は信託財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される。

法人に対する負担付贈与

個人が法人に対し負担付贈与をしたときは、負担額が贈与する財産の時価の2分の1未満であるときは、時価で譲渡したものとみなされる。法人に対しては、受贈資産の時価と負担額との差額を受贈益として法人税が課税される。

死因贈与

個人が死因贈与により財産を取得したときは、相続税の課税対象となる。法人が死因贈与により財産を取得したときは、受贈益に対し法人税が課税され、相続税の課税対象にはならない。被相続人が法人に時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される。

贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除は、戸籍上婚姻期間が20年以上の夫婦において、夫から妻、又は妻から夫に居住用の土地、借地権、底地、家屋を贈与した場合や居住用の不動産を取得するための金銭の贈与があった場合に、一定の要件を満たせば贈与税の課税価格から2,000万円を控除するという規定である。

相続時精算課税制度の申告にあたり過小評価が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額

特定贈与者から相続又は遺贈により取得した相続時精算課税制度適用者は、特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税制度適用財産の価額を相続税の課税価格に加算する。加算する相続時精算課税制度適用の価額は、贈与税の申告書に記載されている価額ではなく、贈与税の課税価格の計算の基礎に算入される財産に係る贈与時の価額である。

贈与税の3年内加算と相続開始の年における被相続人からの贈与

贈与税の3年内加算の対象となる者は「相続又は遺贈により財産を取得した者」である。法定相続人であっても、相続又は遺贈により財産を取得しない者は対象とならない。法定相続人でなくても、遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与により取得した財産は、加算の対象となる。

特定障害者に対する贈与税の非課税制度

個人が財産を信託銀行に信託し特定障害者を受益者とした場合でも、相続税法は信託財産が贈与されたものとみなしている。当規定は特定障害者の生活の安定を図るために行われる一定の要件を具備する信託契約であれば、特別障害者は6,000万円まで、特定一般障害者は3,000万円までの信託財産については非課税とする規定である。